NHKのニュースで長崎の教会群の世界遺産推薦取り下げを検証するという特集をやっていました。
長崎の教会群を世界遺産に
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」という名で長崎県が世界遺産登録を目指してきた取り組みです。
長崎県の大浦天主堂など長崎県と熊本県に点在する14の資産で構成されています。
平成19年(2007年)頃から登録に向けた取り組みが本格化し、平成28年の登録を目指す計画でした。
しかし、平成28年2月ユネスコの諮問機関「イコモス」に禁教時代に特化すべきという内容で推薦書の見直しを迫られます。
それを受けて日本政府はユネスコに提出していた推薦書を取り下げるという決定をします。
NHKのニュースの内容は
録画していないので記憶が曖昧で詳しくはわからないのですが、
推薦書を提出するため専門家の会議が何度か行われ、その会議の席で建築の専門家の発言によって推薦内容の方向性が決定されたという内容でした。
県の担当者は禁教といった歴史に着目すべきであると当初は言っていたが、建築家は教会建築に着目することが重要だと主張したということでした。
キリスト教の伝来、弾圧、復活という歴史の軸と教会建築という軸、両軸で推薦書の内容が決められていったようです。
世界遺産登録に気付くまで
私は平成19年時点では特に意識していませんでしたが、何年か前から
”長崎の教会群を世界遺産に!”といったポスターが飾られたり
バスの車内にステッカーが貼ってあったりするのを見て「あ~教会を世界遺産に登録しようとしてるんだな」
と意識し始めました。
教会に詳しくない
私は仏教徒で教会自体にあまりなじみはありません。
教会といえば学生の頃にキリスト教の同級生が日曜日に教会に行っていたり、
前川清と藤圭子が佐世保の教会で結婚式挙げたとかそんなレベルのことしか知りません。
世間話で宗教の話もしないので、誰がキリスト教かなんてわかりません。
社会人になってからは訃報で葬儀会場が教会となっているのを見て初めてこの方はキリスト教だったんだ
と知るくらいです。
教会は身近にあるけど仏教徒の人にはなかなか身近な存在ではありません。
観光として見学に行くことはあっても普段は神聖な場所で近寄りがたいというのが事実です。
少しだけ知る努力してみる
世界遺産登録を目指すのであれば少しは内容を知ろうと思い、勉強してみました。
まず長崎市の「日本二十六聖人殉教地記念館」に行きました。
近くに西坂教会があってこの教会の外観が目を引きます。
(画像は「あっ!とながさき」より借用しました)
2つの塔がにょきっと出ています。長崎駅の近くでお店やら住宅が密集しているなか
突然この塔が見えますので驚かれる方もいると思います。教会というより現代アートっぽい雰囲気です。
記念館に一歩入るととても静かで照明は暗く、清らかで重厚な雰囲気です。
俗世間のうるさい世界とは切り離された静謐(せいひつ)な世界でした。
嫁が訪れた時は外国の方(西洋の方)が多くいました。
歴史的資料がたくさん展示してあり、説明も詳しいのでキリスト教弾圧の歴史を落ち着いて知ることができました。
文学作品に触れてみた
また、浦上四番崩れを題材にした遠藤周作の「女の一生」を読んでみました。
隠れキリシタンと少女の恋の話です。
プチジャン神父の「信徒発見」、浦上四番崩れなど史実と創作が混じった作品です。
キリスト教弾圧の歴史を知るのにとていい作品だと思います。
読後に少し悲しくなりますが、人を愛することの意味深さを知らせる良い作品でした。
五島市に行ってみた
海を渡って五島市(下五島)に行きました。五島列島は大きく下(しも)と上(かみ)に分かれています。
(写真は上が堂崎教会・下が三井楽教会です)
五島市にはたくさんの教会があります。その中で今回の世界遺産に推薦されていたのは
旧五輪教会と江上天主堂の2つの教会です。(写真はありません)
現在も信者の方がミサを行っている教会もありますので、
マナーに気を付けて見学しないといけません。
私が訪れた時はのぼりが出ていたり、案内がしっかりしていて
世界遺産登録に向けてがんばって活動しているなと感じました。
見学者も増え、キリスト教を知って欲しいという熱意が感じられました。
ある教会の横にコーヒーを出す店があって(いい意味で)商魂たくましいなという印象もありました(^◇^)
見学料や物品の購入などで少しは貢献できたかなと思います。
世界遺産になるためには
キリスト教やその弾圧の歴史についての詳しい教育は受けた記憶がありません。
教育のせいにしているつもりはありませんが、キリスト教について知識がないことにがっかりしました。
戦争や原爆についての平和教育は小学校入学から高校卒業まで毎年必ず行われていました。
長崎に原爆が落ちた日(8月9日)は登校日でした。そして講話や映像で平和教育を受けてきました。
しかし、キリスト教の歴史はこんな身近なものであるのに知りませんでした。
とは言っても宗教はとても個人的なものなのであまり踏み込んだ話はしにくい部分があるのかなと思います。
しかもキリスト教弾圧は悲しい側面が大きい歴史として認識されています。
そのような中で世界遺産に推薦するにはどういう方向でしていけばいいのか迷走してしまいそうです。
私は個人的には長崎のキリスト教遺産は是非世界遺産に登録されて世界中の人に訪れてもらいたいと思っています。
しかし構成資産が県内に点在していたり、アクセスしにくい場所にあることや
祈りの場所なので中に入れなかったりして
実際に訪れた人ががっかりしないかといった不安に思う要素があることも事実です。
長崎県民はどうなのか
長崎県民の中でキリスト教に関心を持っている人はどのくらいいるのでしょうか。
実際はそんなに多くないのかなと思います。
世界遺産として地域に根差したものであって欲しいのですが、長崎県民の中でも温度差があるのではないのかなと感じます。
「長崎の人たちがキリスト教の歴史を知って、教会に訪れて、その価値を知る」
ことが世界遺産に登録されるためには大事なのかなと思いました。
関係者の方は推薦が取り下げられてとても大変だったと思いますが、
あまり急がずにじっくりと価値を考えて登録していってほしいなと思います。
終わり