2019年7月9日 NHK Eテレ放送
知恵泉「紫式部 ”こじらせ女子が自分らしく生きる極意”」
面白かったので内容紹介します。
内容
- 平安のこじらせ女子だった紫式部
- 女の園状況の職場で精神を病む
- 引きこもりからの脱出
- 自分らしく生きる極意
紫式部は『源氏物語』の作者として有名な平安時代の才女です。
『源氏物語』といえば、昔、古本で漫画『あさきゆめみし』を全巻そろえて読みふけっていたなあ。
こんなに面白い作品を1000年以上前に書いていた人物がいたのか!と感動した覚えあります。
源氏物語の作者、紫式部の人物像は『紫式部日記』という作品から知ることができます。
今回の知恵泉も『紫式部日記』の内容を元に構成されていました。
『紫式部日記』は紫式部の書いた日記で、宮中の様子や人物評などが描かれています。
1、平安のこじらせ女子
平安文学の代表である『源氏物語』を書いた紫式部ですが、
『紫式部日記』に書かれた内容はものすごくネガティブです。
『枕草子』を書いた清少納言については頭が良いように見せているけどたいしたことはないと言い放ち。
『和泉式部日記』の和泉式部については和歌はすばらしいが男癖が悪いという評価をします。
紫式部はこの作品で人間の様々などす黒い感情を描いています。
これらの内容から紫式部はネガティブでマイナス思考だったとされています。
番組の中で紫式部の性格は
人の気持ちを深読みしすぎて孤立して友達をなくす。
心に2つの思いがある。私なんてと思っているのに心には高いプライドがある。
と語られます。
そのような屈折した性格になった原因は幼少時代にありました。
紫式部は幼少時代から頭が良く、漢詩文を読みこなしていました。
漢文を直接父から習っている弟より、近くにいる紫式部の方が先に覚えてしまうことも。
そのような状況から男でないことが惜しいと父に言われてしまいます。
男でないと評価されないのはとても悔しかったことでしょう。
2、女の園状況の職場で精神を病む
女房として宮中勤めを始めた紫式部。そこは女ばかりでプライバシーがない環境でした。
女房は通常、家柄などで選ばれていましたが、紫式部は彰子の女房の中で唯一の才女として抜擢されます。
宮中に入る前から話題にされ、以前からいた女房達からは敬遠されていました。
同僚に仲良くしてもらいたいと手紙を書いたのですが、冷たく突き放されてしまいます。
結果、引きこもりがちになり、最終的に引きこもりは5ヶ月にも及びました。
3、引きこもりからの脱出
紫式部は引きこもっている間、自分の周りを観察することを始めます。
紫式部日記には観察した様々な物事が書かれています。
この本からわかることは紫式部は観察能力が鋭いだけでなく、
それを何でも自分に重ねてしまうという特徴を持っていたということです。
例えば帝の御輿行列を眺めても華やかさを感じるのではなく、担ぎ手の苦労を思い、
女房の仕事と重ねてしまう。観察していても不幸の共感ポイントばかりを見つけてしまい
自分と重ね併せてみんな大変なんだと感じるのでした。
その中で紫式部は「わりなしや人こそ人といはざらめみづから身をや思ひ捨つべき」
という歌を詠みます。「他人は人間扱いしなくても自分だけは自分を見捨てていいものか」
という意味の歌です。
紫式部は身の回りを観察していく中で
「卑屈になるのは程々にしていたほうがいい、自分を見捨てないことが大事」
という生き方のヒントを見つけました。
物事を客観的に見る(観察する)ことで感情に振り回されている自分に気づいて、
冷静になったのでしょうか。その後、職場復帰をして自らの居場所を手に入れました。
4、自分らしく生きる極意
観察することは『源氏物語』を生む原動力にもなりました。
『源氏物語』の中には様々なタイプの女性が描かれています。
平安時代の女性の幸せは身分の高い男性と出会う玉の輿でした。
ただし『源氏物語』では身分の高い男性と出会った女性=幸運な女性として描かれていますが
そんな幸運な女性には不幸な環境を背負わせています。
そこから紫式部はラッキー(玉の輿)ではなく自分でつかみ取る幸せ(ハッピー)を求めていたと
番組では語られます。
「現実を背負っているけど心は自由であり、それぞれの幸せを追求していく」
紫式部の立場から考えると、夫の早すぎる死や評価されない才能、宮中での立場など
つらい現実はあるが、アウトプット(書く)ことで自分の存在価値を見いだし
自分の幸せを追求していたのでしょう。
感想
頭が良いことは本人も他人も周知のことだったのに
女ということを理由に才能をなかなか表現できずにこじらせてしまった紫式部。
女性特有の共感力の高さも災いして、考え方や思考はネガティブに向かいます。
ネガティブに内証し悩み考え抜いた先に行き着いたのは文学の世界で表現することでした。
そして『源氏物語』は全世界で読み継がれる日本文学最古の最高傑作となります。
本人にとってはとてもつらい人生だったかもしれませんが、1000年以上読み継がれる
魅力のある作品を書き上げ、全世界へ影響を与え続ける作品を残したことは
歴史的に高い評価を受けています。
今つらい状況の人もこれからどんな世界が待ちうけているかは誰にもわかりません。
この番組で自分らしくある覚悟を持つことと、その先に見えてくる未来を学ぶことができました。
環境に負けず、勇気を持って自分らしく生きていくことが大事。
自分もそうありたいと願います。
終わり